nohakoでは、昨年より「絵画への経験」をテーマに、3つの展覧会を企画してきました。伊藤史展「おもてをたてる」、髙橋圀夫展「奥へ」に続き、最終回となる今回の展覧会は、瀬古徹展「景色」です。通常、絵画を観る経験とは、観者が作品の正面と対峙をする関係のうえで成立するものですが、本展ではそうした観者の視野を拡大し、作品の置かれた場を眺めることから「絵画への経験」を捉えてみたいと思います。
nohakoでは昨年より、「絵画への経験」をテーマとした展覧会を企画しています。第二回目となる今回は、「髙橋圀夫 —奥へ—」を開催いたします。「奥へ」という展覧会タイトルは、絵画としてつくられる空間や内面性への誘いを意味しています。
nohakoでは「絵画への経験」をテーマに、今秋より3つの展覧会を開催します。第一回目の展示は、伊藤史展「おもてをたてる」です。
伊藤さんは、鮮やかな色面からなる抽象絵画を制作する作家です。初期の制作では、色相の重なり合う表層のなかに、公園などの身近で何気ない風景が想起される作品を手がけてきました。また近年では、一色のみの油絵具を日々塗り重ねていくことによってつくられていく絵画の試みや、紙を支持体としたパステルや水彩絵具によるドローイングの連作に取り組み、自身の身体性や制作行為を一枚の平面として立ち上げていく表現へと移行しています。
大分県別府市在住の松田浩樹さんは、地域の産業である別府竹細工の伝統を継承しつつ、現代の生活空間に竹工芸のしなやかな美しさと魅力を提示している工芸作家です。別府竹細工は歴史が古く、室町時代より続いていると伝えられています。茶碗籠等の生活道具として作られていた竹細工の製品は、明治時代に入り技術力の高い工芸品として発展をしますが、その後、昭和30年代のプラスチック製品の参入によって、特別な美術工芸品へと変化をしていきます。
佐竹宏樹さんは、ステンシルの技法を用い、「花柄」による人物や群像の平面作品を制作する美術家です。佐竹さんの作品は、モデルの輪郭を浮かび上がらせる鮮やかな肖像画でありつつも、図像を埋め尽くすアイコンとしての「花柄」を通じて、制作者自身の意識を表出する場をつくり出しています。
阿部浩二さんは、自身が過ごす場所から素材や情報を選び、それを作品化していく美術家です。これまでの作品では、市民から提供され集められた大量のネクタイを大分市街地にインスタレーションした《社会見学》(1993年)や、既存の備品により作品展示の概念と空間を再構成した福岡市立美術館での《模様替−待合室》(1998年)等、場所に対する関わり方を独自のユーモラスな切り口によって提示をされました。また近年の制作では日常の生活環境との接点を深め、子供たちとつかまえた昆虫をモチーフにした木彫作品や、お裾分けの野菜を描いた水彩画、あるいは身の周りの日用品を生き物に見立て記録していく写真作品等を手がけています。