−奥へ−

2018年5月11日(金)−6月3日(日)

nohakoでは昨年より、「絵画への経験」をテーマとした展覧会を企画しています。第二回目となる今回は、「髙橋圀夫 —奥へ—」を開催いたします。「奥へ」という展覧会タイトルは、絵画としてつくられる空間や内面性への誘いを意味しています。

本展で紹介をする髙橋さんの作品は、無数の筆触とそれを淡く覆う色面が重なる抽象絵画です。その多層的な画面は、過去に描かれた絵の上に新たに加筆をする「重ね描き」によってつくり出され、作家自身の記憶のなかに潜む風景の断片が不意に現れてくるように感じられるものです。かつて髙橋さんは、『ACRYLART/Vol.31』において「筆触(touch)」についてふれています。『西洋美術辞典』からの引用により、それは「筆が触れるときに生ずる触味の種々相を言う。この際、筆・色料・画面・画者の筆の扱い方等の複合交差によって、様々な様相が生ずる。そして最も重要なのは画者の筆の扱い方で、その筆端には画者の心境・体質・性行・芸術観等凡ゆる特質が伝わる」という意味であること、また、アトリエの床に張られた紙の汚れと少年時代に見た野外映画の映写幕の印象との重なりについて記しています。描く行為と画面に触れることによって確かめられる絵画の在りようは、様々なイメージを含みながらも、常に平面として還元されていきます。本展ではそうした絵画のもつイメージと平面性との行き来をひとつの「奥行き」として捉え、髙橋さんの作品を手がかりに、絵画空間へと入っていく視覚経験を味わいたいと思います。どうぞご高覧下さい。

髙橋圀夫 Kunio TAKAHASHI

1929
群馬県生まれ
1949
群馬大学群馬師範学校卒業
1960
文化学院美術科卒業

個展

1965
〈内分泌感覚としての円〉 新宿画廊/東京
1966
〈円—この禁欲的なもの〉 画廊クリスタル/東京
1967
〈低位のゾーン〉 シロタ画廊/東京
1969
〈1969年9月のProject… [Mr.Anonymに答えて]〉 シロタ画廊/東京
1971
〈浸透のプロセス〉 シロタ画廊/東京
1972
〈未指示〉 シロタ画廊/東京
1973
〈before indication〉 村松画廊/東京
1976
〈都美術館で個展をやろう!〉無所属作家会議 東京都美術館/東京
1977
〈2/5〉 旧田村画廊/東京
1978
〈かべならし、かべならむ〉 田村画廊/東京
1979
〈辺り(あたり)〉 田村画廊/東京
1980
〈無題〉バットに入れた塗料、磁気テープ、枝など 田村画廊/東京
1981
〈無題〉噴出岩の移動 田村画廊/東京
1982
〈無題〉スライスした檜、欅や手を光に透かす 田村画廊/東京
1984
〈for-mage〉哲学堂—Scene and branch 田村画廊/東京
1985
〈for-mage〉鳥の方法学 田村画廊/東京
1986
〈作為—イリュージョン〉無意図的痕跡のようなドローイング 田村画廊/東京
1989
〈movement ’89〉 女子美画廊/東京
1990
〈movement ’90〉 真木・田村画廊/東京
1992
〈movement ’92〉 真木・田村画廊/東京
〈movement ’〉 ギャラリー銀座sanbankan/東京
1994
〈Portrait、YANAKA〉〈Sweat、YANAKA〉 アートフォーラム谷中/東京
1995
〈髙橋圀夫 ’85- ’95〉 ARTSPACE88/東京
1997
〈さまざまな眼 82〉 かわさきIBM市民文化ギャラリー/神奈川
1998
〈有機電気〉 ジ・アースミュージアム/東京
2000
〈三叉神経、他〉 真木・田村画廊/東京
2001
〈リヴァーシブル〉 始弘画廊/東京
2003
〈継起・現象する異別〉 始弘画廊/東京
2004
〈継起(現象)する異別〉 ギャラリー檜/東京
2006
〈うら庭にて〉 ギャラリー檜/東京
2007
〈重なり〉 ギャラリー檜/東京
2008
〈重なり〉 ギャラリー檜/東京
2009
〈連続個展形式の二人展〉 ゆーじん画廊/東京
2010
〈薄絵〉 ギャラリー檜/東京
2011
〈居留〉 ギャラリー檜/東京
2014
ギャラリー檜B/東京
2015
ギャラリー檜B/東京
2017
ギャラリー檜F/東京

他、グループ展等多数