−初夏−
2015年6月26日(金)−7月19日(日)
阿部浩二さんは、自身が過ごす場所から素材や情報を選び、それを作品化していく美術家です。これまでの作品では、市民から提供され集められた大量のネクタイを大分市街地にインスタレーションした《社会見学》(1993年)や、既存の備品により作品展示の概念と空間を再構成した福岡市立美術館での《模様替−待合室》(1998年)等、場所に対する関わり方を独自のユーモラスな切り口によって提示をされました。また近年の制作では日常の生活環境との接点を深め、子供たちとつかまえた昆虫をモチーフにした木彫作品や、お裾分けの野菜を描いた水彩画、あるいは身の周りの日用品を生き物に見立て記録していく写真作品等を手がけています。
こうした一連の作品は、阿部さん自身の場所への介入がいつの間にか他者へと手渡されてしまうようなある種の不思議さを含んでいるように感じられます。今回のnohakoでの展示は、複数のリセントワークによって構成のなされたインスタレーションを紹介するものですが、一つひとつの展示作品の中に、阿部さんの場所に対する視点や反射的な態度、またそうしたアプローチを作品へと昇華させていく制作者の時を見つける機会になると思われます。阿部さんによってしつらえられた「初夏」より、お越し頂いた方々と作品との一期一会の出会いの場がつくられていくことを期待しています。
アーティスト・ステートメント
ある日、身近な小さな生き物の記録を写真に撮りはじめました。そこからゆっくりと時間をかけて、自然の色や質感、触感、香りなどを丁寧に見つめる作業をはじめました。できた木彫と 水彩の作品は、実物と並べてみると想ったほどでない事を確認しながら、なんども繰り返し見つめ直す作業を進め、手を加えていきました。そうしていると、小さな生き物を見つめる事が、そのまま木や森や川や土を見ている気持ちになりました。こんな風に景色との関わりを楽しみながら、作業を続けています。私の住む町の初夏は、蛍が飛び交った後、日照時間が日一日と長くなる夕刻に、草むらからの合唱も一寸ずつ大きく聞こえだす。梅雨の大雨があけると、気持ちのいい風が甘く蒸せた土の匂いです。
阿部浩二 Koji ABE
- 1970
- 大分県生まれ
- 1992
- 武蔵野美術大学短期大学部美術科卒業
- 1994
- ヴィラ・サンクレールのレジデンスプログラムに参加、フランス・セートに滞在
- 1998-99
- ポーラ美術振興財団の助成によりフランス・パリに滞在
主な個展
- 2000
- 「名前はまだない」/オアシス総合文化センター(大分)
- 2001
- 「伝記」/O-NE manokurozasu(埼玉)
- 2004
- 「小国オープン」/小国町(熊本)
主なグループ展
- 1991
- 「現代美術と街空間展」/鶴来町(石川)
- 「ヤンフートの眼」/三菱地所アルティアム(福岡)
- 「ボイスを考える部屋」/ワタリウム美術館(東京)
- 1993
- 「大分現代美術展`93 非常識2」/大分市(大分)
- 1995
- 「第1回ヨハネスブルグ・ビエンナーレ」/ヨハネスブルグ(南アフリカ)
- 1997
- 「Du Construit , Du Paysage」/ラングドック地方現代美術館(フランス)
- 1998
- 「私だけのMUSEUM」/福岡市立美術館(福岡)
- 2000
- 「ミュージアムシティープロジェクト2000 外出中」/博多町屋ふるさと館(福岡)
- 2012
- 「ゴットンアートマジック」/田川ごとうじ銀天街(福岡)