−線の林−

2015年5月15日(金)−6月7日(日)

向井三郎さんは、アトリエから見える風景や身近な人々の姿をモチーフに、木炭による素描を中心とした平面作品を手がける美術家です。

近年の向井さんの作品は、線描のみで画面を自立させていく傾向を強め、2014年の展覧会「生きられた時間」では、人物の肖像をギャラリーの壁面に直接描いていくウォールドローイングを行うなど、実験的な制作展開も試みています。こうした向井さんの線描による作品表現は、ご自身がこれまでに行ってきた制作過程と同様に、対象を見ることとそれによって得られる視覚情報を画面に写しとっていく基本的な態度や、制作行為の反復性からつくられる多焦点的な画面を表出している一方で、作品はより平面的な図像へと移行しているように映ります。

平面的な視覚性を保つ向井さんの作品は、線と余白、あるいは図と地の間を行き来する観者の作品経験の構造を明らかなものにし、一本の線の上に踏みとどまる心地、あるいは線の向こうにある余白へと通り抜けていくような感覚の連続性を観者に与えてくれます。本展のタイトル「線の林」は、木々の立ち並ぶ情景の中でそれぞれの木に触れ、またそれらの間を通過するような空間経験と、向井さんの素描がもたらす視覚経験とを重ね合わせ付けられたものです。作品の表層を覆う線との対話から、向井さんの見た風景とその形象を知覚してみて下さい。

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《響、鳥の声》2015 紙、木炭
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「ウォールドローイング」2015 木炭《T.A.》2015 紙、木炭
《T.K.》2014 紙、木炭《M.S.》2015 紙、木炭
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「ウォールドローイング」2015 木炭
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《みみ》2015 油絵具、ガラス《M.S.》2015 ドライポイント
《T.A.》2015 エングレーヴィング
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《J.I.》2014 ドライポイント《T.K.》2015 ドライポイント
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《T.A.》2015 ドライポイント
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《響、鳥の声》2015 紙、木炭

向井三郎 Sabro MUKAI

1964
福岡県生まれ
1987
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業
1989
東京藝術大学大学院美術研究科修了
1992-94
オランダ政府奨学金受給、オランダ・ハーグに滞在、王立造形芸術アカデミィ(モニュメンタル・デザイン)に在籍

主な個展

2001
ギャラリー覚(東京)
2002
「Inner Constellation(内なる星座)1992~2002」/ちばぎんアートギャラリー(東京)
2005
「Silent」/巷房(東京)
2008
「Speak not」/巷房(東京)
2010
「hearing」/巷房(東京)
2012
「土と人」/巷房(東京)
2013
「肖像 土、木、人」/ギャラリー・チフリグリ(宮城)
2014
「生きられた時間」/巷房・2+階段下(東京)

主なグループ展

1999
「回廊の中心にて」/横浜ガレリア・ベリーニの丘ギャラリー(神奈川)
2004
「窓辺」/O-NE manokurozasu(埼玉)
2009
「陣をたため!出発だ!愛と希望とカオスのもとへ!」/なびす画廊(東京)